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世界のVC注目の「X-Tech / ReTech」|ReTechリーディングカンパニーが次の5年で仕掛ける新領域

目まぐるしく加速するビジネスとテクノロジーの融合。日本でも業界成長率が高い、不動産×テクノロジーのReTech領域を牽引する、GAtechnologiesの代表と取締役のお二人に近年の業界の動きとこれからの展望を語ってもらった。

Jan, 15, 2019

株式会社GA technologies

樋口 龍 氏 ・ 渡辺 正志 氏

ReTechの成長の先に見据える、X-Tech参入のタイミング

樋口:私たちが創業から5年間続けてきたReTech領域も、ここ数年でかなり注目される存在になってきました。グローバルで見てもReTech企業に対する投資は2013年には133案件、593億円だったのに対し、現在487案件、1兆653億円を超える規模になってきています。2013年から早々にこの領域に参入してきた私たちとしては、「ようやくきたか」という気持ちですね。

渡辺:そして、これからGAtechnologiesは第二創業のフェーズに入っていきます。今まではReTech事業をいかに成長させていくかというところに、ほとんどのリソースを注いできました。これからは不動産に限らず、建設や金融、保険などのビッグマーケットかつ社会的意義の高い領域において、テクノロジー化が遅れている分野に挑み、グローバルなサービスを提供するというところにチャレンジしていきます。

樋口:ビジネスにおいて“タイミング”は非常に重要ですからね。

FinTech(金融×テクノロジー)やHRTech(人材×テクノロジー)こそ、国内で取り組んでいる企業は500社以上ありますが、ReTechでさえようやく50~60社程度です。さらに、InsurTech(保険×テクノロジー)、ConTech(建設×テクノロジー)といった領域に取り組む企業はまだ4、5社しかありません。IT化が十分に進んでいない産業にテクノロジーの力を活用するX-Techの波は確実に日本にもきています。世の中の流れを見極め、いかにその領域に、他社に先駆けて投資していくことができるか、そのベストなタイミングを見逃さないようにしています。

渡辺:実際にソフトバンクビジョンファンドが、アメリカでReTechやConTech領域を担う、Compass、WeWork、Katerraなどに積極的な投資を行っている動きがあります。

私も前職の投資銀行時代に世の中の変化にはかなり敏感でしたが、この流れを読みながら、具体的に事業を仕掛けている会社は、国内にまだほとんどありません。

X-Tech参入のためには、ネットとリアルの両軸が不可欠

樋口:そんな中でも私たちの強みは、ネットとリアルの両軸でビジネスを行っていることです。オンライン上のサービスだけではなく、不動産も直接売買していますし、建設分野にも設計から携わっている。保険に関してもお客様が不動産を購入した際に、絶対に必要となる分野です。このような「リアル」のシーンで多くのお客様と対面しているからこそ、その中で見えてくる課題がたくさんあります。

渡辺:例えば、これまで取り組んできた不動産領域の話をすると、変えなければいけない3つの課題があります。1つは「情報の非対称性」。次に、「テクノロジー化の遅れ」。そして最後が「中古流通比率の低さ」です。

まず「情報の非対称性」ですが、物件を購入する際に、買い手と売り手の間には非常に大きな情報格差が存在します。そうした格差を少しでも解消するために、2018年2月にリリースした「Renos(yリノシー)」というサービスでは、AIを活用して売り出している物件だけでなく、売り出されていない物件の情報も検索できるようにし、過去の成約事例や現在の不動産価値を閲覧可能にしました。

2つ目の「テクノロジー化の遅れ」は業界で働く側の人に関しても言えることです。実際に運輸通信の2000年頃のIT化率を100とした時に、不動産はわずか3でした。2010年時点でもほぼ横ばいというデータがあり、不動産業界は未だアナログな作業から抜け出せていません。そこで弊社では社内のエンジニアが各部署の業務システムを開発し、まずは社内業務の効率化を推し進めてきました。

3つ目の「中古流通比率の低さ」ですが、欧米では中古物件の流通が不動産全体の90%であるのに対し、日本では市場のたった30%と非常に少ない。それなのに人口減少社会の日本では、未だに年間100万戸近い新築が建てられています。新築をたくさん建てるよりも中古流通を活性化させていく方が効率的ですし、社会への貢献度も高い。

樋口:事実、アメリカの不動産投資額が1,800兆円なのに対して、現在価値も同じ1,800兆円ですが、日本の場合は投資額が800兆円に対して、現在価値は400兆円。つまり、日本では買った後に価値が半減してしまっているということです。私たちがそのうち5%でも現在価値をアップさせることができれば、社会的にも大きな貢献ができます。

次の5年で続々と生み出される、新たな領域への挑戦

樋口:私たちは創業当時からグローバルなサービスを作るということを掲げてきました。それを実現しない限り、企業としての存在意義がないと思っています。GAtechnologiesは5年間で200人規模の会社に成長しましたが、これからさらに飛躍するタイミングです。次の5年で生まれる事業領域はたくさんありますし、まだ組織として固まった形もない。この成長期に弊社の理念に共感をしてジョインしてくれる人にとっては、大変な分、それ以上の刺激とやりがいを感じられる環境にしていきます。

渡辺:そのひとつとして、不動産と親和性の高い保険を活用したInsurTechの領域はすでに動き始めています。実際に2018年5月にはInsurTechを検討・推進するプロジェクトチームを立ち上げました。不動産を購入すると必ず、火災保険や家財保険に入る必要があり、不動産業界で培ってきた経験があるからこそ、そうした領域における課題を拾いあげ、親和性が高い分野に参入することができます。ConTech領域に関しても、いままさにリサーチを進めているところです。あと数ヶ月もすれば、コンテックに関する部署が立ち上がるでしょう。

樋口:一方でReTech領域でも不動産に対するイメージやリテラシーを高めていく必要があります。日本では高額な商品に対する知識がないことで、なんとなく怖いというイメージをもたれがちです。そもそも高校や大学などで、金融や投資に関する教育を受けていない人がほとんどなので、正しい知識を醸成するためにもEdTech(教育×テクノロジー)の領域まで取り組む必要性を感じています。アメリカで不動産エージェントは、医師や弁護士と同じくらい社会的な評価が高い職業ですから、そのレベルに向けて少しでも近づけていければと考えています。

グローバルサービスの創出に向け、 有機的連携が図れる組織風土

渡辺:そんな X-Tech の可能性を信じて、 GA technologiesには多種多様な業界か ら人材が集まっていて、その中にはコンサ ルや金融業界出身者も多くいます。その 理由として、X-Tech 領域に関心が高く、 市場が成長する予測があるというのはもち ろんありますが、先ほど樋口が話したよう に、ネットとリアル双方向の事業連携が これからさらに大事になると、いち早く感 じているからではないでしょうか。

樋口:IT だけで完結できるサービスは一巡したと言われていますからね。いまはネッ トとリアルの垣根がちょうどなくなってい るタイミング。そういう意味で X-Tech の 領域に参入する企業は、どちらにも取り 組んでいないと難しい。ネットとリアルを マージしながら事業を進めない限り、的 確な課題抽出が難しく、事業を進めるス ピードも劣るでしょう。

渡辺:シリコンバレーと日本のエンジニア の大きな違いは、開発中のプロダクトにつ いてどれだけユーザーヒアリングをするか というところにあります。前者は圧倒的に その回数が多い。社内でも双方の領域に ついて理解を深めるのに時間はかかりましたが、エンジニアが開発した新プロダクト をメンバーやお客様に実際に触ってもら い、ユーザー目線の具体的なフィードバッ クを受ける。そんなやりとりを一年かけて 続けた結果、ネットとリアルそれぞれの事 業間で有機的な連携をとれる土壌が、よ うやく整ってきました。

樋口:実はこれまでに何度か新規事業に 取り組んだことがあるのですが、どれもあ まりうまくいきませんでした。振り返って みると、そこにはマーケットインの考え方 が足りなかった。リアルの中で感じている アナログな課題に対して、テクノロジーを 用いて解決するアプローチを重ねていく。 その先にマーケットを大きく変えるよう な、新たなサービスが生まれる。グローバ ルなサービスを生み出すためには、やはり ネットとリアル相互の理解を深めていくこ とが必要不可欠だと考えています。そう した一朝一夕ではつくることのできない、 X-Tech を加速させるための風土づくりに もこだわっていきます。

多種多様な人材が肩を並べる どこよりも成長できる企業へ

樋口:世の中の動きが加速して、変化が激しい社会において「この職種がいい」という偏った考え方は、いまのうちから持たない方が良いと思います。例えば、新規事業立案をするにしても、企画をするだけなら誰でもできますが、企画を実現するためにどのような開発を伴うのか、それをどう販売し事業としてグロースしていくのかという一連の流れを理解しているかどうかで、立ち上がりのスピードと得られる結果に大きな違いが出ます。不動産業界の中でもエンジニアが活躍したり、金融の知識が思わぬ分野で活かせたりと、担える役割や領域もどんどん変化しています。どういう仕事に就きたいかではなく「どんな風に成長したいか」という目線で仕事を選ぶ時代。 グローバルなサービスを作り、世界のトップ企業になる。皆さんには、そんな会社の成長を肌で実感できる機会にぜひ触れて欲しいと思います。

GA technologiesについてもっと知りたい方はこちら

株式会社GA technologies

Interviewee

樋口 龍 氏

ひぐち・りょう

株式会社GA technologies

代表取締役社長

1982年東京生まれ。幼い頃より世界的なサッカー選手を目指し、ジェフユナイテッド市原(現J2)に所属 (育成選手)。24歳の時にビジネスマンへ転身し、不動産会社に勤務。“アナログな不動産業界にテクノロジーで革命を起こす”と志し、2013年に株式会社GA technologiesを設立し、代表取締役社長に就任。AI を活用した中古不動産流通プラットフォーム「Renosy」を中心に、データドリブンな不動産サービスを展開。

Interviewee

渡辺 正志 氏

わたなべ・まさし

株式会社GA technologies

取締役CFO

大阪大学経済学部卒、同大学院経済学研究科修士課程修了。在学中にUniversity of Washington(シアトル)に1年間の交換留学。新卒で国際協力銀行に入行した後、モルガン・ スタンレー証券(当時)に転職し約9年に亘って企業の資金調達やM&Aに従事。その後HEC ParisにてMBAを取得しバークレイズ証券にて再び投資銀行業務に従事したのち当社参画。